傭われ女騎士が王国にケンカを売るらしい

竜に雇われた女騎士が王国を相手に大奮闘⁉︎

傭われ女騎士が王国にケンカを売るらしい 第1話

セルディ「貴様が親玉か⁉︎」


竜騎士「………」


セルディ「む?竜騎士か…いや、野生のワイバーンを従えているとなると魔物の騎士…魔剣士が乗っているのか⁉︎」


竜騎士「…忠告する。手出しをするな。これは我々の戦いだ」


セルディ「なっ…やはり人間なのか?」


竜騎士「忠告はした…自惚れるなよ人間共」


セルディ「ま…まて‼︎」


竜騎士「………」









竜騎士「…はぁ、どうしてこうなっちゃうのかな」














ーとある渓谷ー


「んー‼︎今日もいい天気ね。さてと支度しますか‼︎」


ここは王都の外れにある渓谷


私はその渓谷の麓に一人暮らしをしています


両親は亡くなり自分の力で生きる事を選んだ私は、騎士の学校を卒業し国家が管理する騎士団に在籍しています


女ってだけで甘く見られるので、人一倍鍛錬を積み、若くして小隊長まて登り詰めました


争いが多いこの世界で、決して楽しい生活とはいきませんが


それなりに満足しています


ただ




「お?もうそんな時間?んだよー、そんな急いでも良いことないぞリリア」


今気だるそうに話し掛けてきた声


それはこの渓谷に生息する中型の翼竜


そうー


ワイバーンである。愛称はトリス


黒色が映える、見栄えのいい翼竜だが性格はずぼらなようだ


彼は庭先で朝日に照らされて日光浴中である



リリア「あのね、私はあんたみたいにダラダラ過ごしてる暇ないの!小隊長だよ?偉いんだよ?」


トリス「かぁーでたでた!肩書きに弱い人間はやだねぇ!いいか?大事なのはなぁ…」


リリア「だったら今晩のごはんは抜きー」


トリス「頑張れリリア!応援してるぞ!」


リリア「…ったく、行ってきます」



血筋というか先祖代々、竜騎士を多く輩出してきた家系なのだが、ここ数百年は産まれて来なかった


しかし、私はその力を持っていたらしく、竜族と会話できたりもする


そんな私は傷付いたトリスを見つけて、いつの間にか共に過ごすようになっていたのだ


王都の部隊には竜騎士も多く存在するが、会話できたりとかは忘れ去れて、遥か昔のおとぎ話レベルらしい


でも私は、あえて竜騎士の道は選ばなかった


竜と話せるなんて知れたら、趣味の悪い研究なんかに使われかねない


そもそも、竜と話せても乗りこなしたりはまったく出来ないのである


これは新人の時の実技で確認済みだ


渓谷を下りながら景色を楽しみつつ王都へ向かう


片道30分程度だが、渓谷から降りてくるのは案外大変だ


王都に寮はあるものの、なんというか街というのに慣れない


自然の中で住む方が私には向いているらしい


そんな事を考えていると王都に着いた


セルディ「お?おはようリリア、今日も早いな」


セルディ隊長、若くして隊長を務めるいわばエリート


知的で部下からの信頼も厚くイケメンと女性からの指示も凄まじい


私はそうゆうのに疎いので、ただの良い上司止まりだけど


リリア「おはようございますセルディ隊長!隊長こそ1番じゃないですか」


ダスク「馬鹿め!隊長より先に来て掃除をしていたのは僕だ‼︎」


リリア「あ…ああ、おはようダスク」


彼はダスク、私と同じセルディ隊の2番隊の小隊長である


彼も若くして小隊長だが、まぁ色々と残念な男だ。顔もソコソコなのにもったい無い


ダスク「隊長⁉︎足元が汚れています!ささ、こちらに履き替えて下さい」


セルディ「おいおい、これ位なんだっていうのだ。」


セルディは呆れながら適当にあしらう


ダスクはセルディに陶酔していて、彼の為なら命を捨てれると毎日豪語している


周りからの痛い目線は毎日の事だ


リリア「あ、隊長。今日は特別な任務と聞きましたが…」


セルディ「ああ、そうだ。お前らに先に伝えておこうと思う」


ダスク「はい!なんでしょう隊長‼︎」


セルディ「この先の渓谷に、凶悪なワイバーンが出現するらしい。その調査に出向いてほしい」


ダスク「討伐ですね!」


セルディ「いや、一応竜騎士隊の戦力にとも考えているのだが…なるべく戦わない方針だ」


ダスク「わっかりました隊長!このダスクにお任せ下さい‼︎では!」


リリア「あっ…部隊も連れないで行きましたね彼」


セルディ「…ふぅ、まぁ良い。ワイバーンは知性も高く警戒心が強い。なるべく少数での任務だが……ダスクとリリアに任せたい」


リリア「えっ…あの馬鹿…ッ違う、ええと2人でですか⁈」


正直、不安で仕方がない


しかも私は、あの渓谷に住んでいる事は周りに口外していない


そんな所に自ら調査に行くなんて自殺行為である。相方はしかもダスクだ


セルディ「あくまで調査だからな。無理はしないように。お前達の部隊は私が預かるよ」


リリア「は…はぁ、了解しました」


気が重い…初任務より不安なのは初めてだ






ー渓谷入り口ー


ダスク「遅いぞリリア!貴様セルディ隊長の任務をなんだと心得る」


リリア「あーうるさいうるさい!」


ダスク「手柄は僕がいただく!強いワイバーンを従えて帰るのだぁ‼︎」


リリア「あ、ちょ…ええー」


ダスクは走り出した


警戒心もクソもない


よく小隊長になれたものだと未だに謎である


しかしダスクが走る方角には


そう


私の家があるのだ


リリア「やっば…トリスもいるのに⁉︎」


リリアは自身の家に向かい走り出した





ダスクの後ろ姿が見えた


しかもその先に見える私の家


リリア「…最ッ悪の展開ね」


リリアはとりあえず、シラを切りやり過ごすと決めた


バレてもどうと言う事は無いだろうが、何か嫌な予感がしたからだ


ダスク「む?こんな所に怪しい家があるぞ⁉︎」


リリア(ただいま、お願いトリス居ないでね…)


ダスク「おい!誰かいないのか?おーい‼︎」


リリア(叩くな叩くな!たてつけ悪いんだぞ?開かなくなったらどうしてくれる⁉︎)


ダスク「ぬぅ…鍵が掛けられているのか」


リリア「る…留守みたいだしここはスルーしましょ?」


ダスク「む!裏の窓が開いてるぞ⁉︎」


リリア(おらトリス!あいつ開けやがったな⁉︎窓も開けれるのか最近の翼竜は‼︎)


ダスク「ふむ…質素な部屋だな。しかも汚い」


リリア「そ、そうかなー?普通じゃない⁉︎」


ダスク「馬鹿め!僕は潔癖性なのだ。おおかた、この部屋には山賊でも住んでいるのだろう」


リリア(そこまで汚くねぇよ‼︎)


ダスク「…む?」


リリア「……げ⁉︎」


ダスク「これは…女物の…下着か?」


リリア(ああぁぁぁああ‼︎もうダメだ耐えられない‼︎)


リリア「ダスク!ここはねー


「グァアアアルァァア‼︎」


ダスク「む!なんだ‼︎この声は」


リリア「あぁ‼︎コラ捨てるな馬鹿ぁ‼︎」




外に出ると、リリアですら見たことがない大型のワイバーンが姿を現した


「グルルルル‼︎」


ダスク「はっ!こいつはいい。是非打ち負かして連れて帰ろうじゃないか」


スラリと剣を抜き、ワイバーンに向けて構えをとる


リリア「こらダスク!なるべく戦闘は避けるようにセルディ隊長が…」


ダスク「この状況でそんな事が出来るか?」


リリア「………出来る」


ダスク「ほぅ?どうやって…んべ‼︎」


リリア「ごめんね…さてと」


リリアは鞘でダスクの頭を叩き伏せ気絶させる


そしてワイバーンの方へ歩み寄り


リリア「こんにちは、あなた見ない顔ね?」


「ほぅ…我と話せるのか?やはりアイツの言うことは本当だったか…」


リリア「アイツって…もしかしてトリス?」


「そうだ…しかし疑い深い話でもあったのでな…実際に確認しにきたのだ」


リリア「んー…タイミング的には最悪ね。仕方ないけど」


「そやつは…というかお主も王都の騎士か?」


リリア「知ってるの?ええそうよ」


「ふむ…しかしトリスも酔狂な。王国の者と手を組むとは」


リリア「まぁアイツを保護した延長上で一緒にいるだけなのよね」


「まぁ良い…我らの主がお主に会いたがっておる」


リリア「ワイバーンの…主?」


「トリスを使いに向かわせたが…アイツまたサボりおってからに」


ワイバーンは大きな鼻息を吹き出すと、同族に対し怪訝な表情になる


リリア「ちょ…ちょっとまって!会いに行くのは良いけど、私は…背中とか乗れないよ?」


「ふむ?案ずるな、ではこうするまでよ」


リリア「え?…えぇ⁉︎きゃぁあああ!」



ワイバーンは脚でリリアの胴を鷲掴みにすると、勢いよく空へ舞い上がった


リリア「いやぁ〜‼︎むりむりむりむり!降ろしてぇええええ‼︎」


「この程度の高さで大袈裟な…それでもあの方の血筋か…」


リリア「いやぁぁぁああ‼︎」



ダスク「…………」


ダスク「…はっ⁉︎僕は一体⁉︎」


ダスク「あれは…リリアがワイバーンに攫われただと⁉︎…これは一刻も早く隊長に知らさなければ…‼︎」






リリア(あぁ…私は一体…どうなるのぉぉぉおおお⁉︎)